出演者 池田千雪  2000.12.24
 今日の心と体のクリニックでは、池田千雪先生に「お茶と健康」についてお伺いします。さて、先生、お茶といえば、食後に飲んだり、気分転換に飲んだりということで毎日の生活に欠くことのできない飲み物になっています。また、「日常茶飯事」という言葉もあるとおり毎日のものという感じもしますけれども、今日はその生活に入り込んでいる、お茶についてお話を伺っていきたいと思います。
 よろしくお願いします。今日 この時間にお茶についてのお話を選んだのは、少々私、茶道をたしなむために お茶について皆さんにちょっと知っていただこうかと思いましてお話を選びました。まず、お茶は成分ですが タンニンとかカフェイン、タンパク質アミノ酸、糖質、それから脂質、繊維、灰分、ビタミン、ミネラルなどですね。緑茶、紅茶、ウーロン茶など お茶の種類によっては 多少成分の違いはありますけれど ほぼ同じ成分をもっています。お茶の成分の大部分は、水溶性ですからお湯に溶けますが、一部の成分は脂溶性のために浸出できませんね。お茶は、加工を重ねる度に内容成分が変化したり、減少したりしますので、加工度の少ない緑茶が、一番自然の形で豊富な内容成分が保存されています。この点、お抹茶はお茶を挽いて、その粉を飲むわけですから 大変有効となるわけですね。それで、効用についてですけれど、身体に良い薬効成分を豊富に含んでいますので、病気を予防し健康に役立つので 嗜好飲料としてより、保健飲料と言ったほうがいいかと思います

 さて、この保健飲料と呼ばれているお茶の効用なんですけれども、どんなものがあるんでしょうか? 

 はい、それは第一に発ガン抑制作用、それから老化の防止作用、それから食中毒への効用ですね。その上、虫歯の予防、肥満の予防、覚醒作用、その他ありますけれど 主なものはだいたいこのようなものがあります
 なるほど。やはり「お茶は身体にいい」ということなんですけれども、もうちょっと詳しくご説明いただけるでしょうか?
 先ほどの順序に従ってお話しますね。一番目の発ガン抑制作用ですけれど、これは緑茶のタンニンが発ガンの原因になる細胞の突然変異を抑制すると、1983年、国立遺伝学研究所の もうお亡くなりになりましたけれど 賀田教授が発表されまして大変注目されました。つまり遺伝子の一部に変化が生じ、細胞の突然変異が起こりますね。この、変異した細胞が増えると癌の発生が起こると言われています。ですから、この細胞の突然変異を抑制するというわけですね。緑茶には、紅茶より沢山のタンニンが含まれています。また紅茶には含まれていないビタミンCも含んでいるので、発ガン抑制作用については大変期待がもてるかもしれませんね。二番目の老化の防止ですが、生命の維持のためには、空気中の酸素は大変大事なものですから、身体の中でその一部が、活性酸素となり脂質を酸化させて過酸化脂質を生成します。この過酸化脂質は、動脈硬化を促進したり、細胞の老化を起こしたり、人体に色々な障害を発生させます。お茶のタンニンは老化の原因となる過酸化脂質の生成を抑えますね。また、ビタミンCにもコラーゲン生成に必要な物質のわけです。三番目としまして、食中毒への効用ですが、お茶のタンニンを使った実験の結果、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、腸チフス菌、ネズミチフス菌、コレラ菌などに抗菌作用と殺菌作用があると解明しました。「お茶を飲みながら食事をすれば、食中毒は防げる」とお茶の殺菌力や腸に感染する病原菌に効くことが、発表されています。皆さんご存知のように どこのお寿司屋さんでも、粉茶をたっぷりと出してくれますね。お寿司の主材料である生鮮魚介類の消臭と 食中毒の予防も この効果を利用した先人の知恵だと思います。最近よく食中毒の話題となるO―157に対しても有効であるといわれています。
 お茶で虫歯予防ができると 先ほど伺いましたが、これはいかがですか?
 はい。お茶の成分には、虫歯を防ぐタンニンとフッ素が含まれています。タンニンは抗菌作用があり食中毒を防ぐと、先ほど述べましたけれど歯周菌を殺し、虫歯菌の増殖を防ぐ働きがあります。ですからお茶でうがいをするのも予防できるかもしれませんね。五番目に肥満の予防ですけれど 皆さんこれ興味がおありだと思いますけれど お茶のタンニンの効用のひとつに脂肪の吸収を抑制する働きがあり、お茶のサポニンにも同様の働きがあるといわれています。その他、カフェインは利尿作用もありますし、タンニンには、腸内調整作用もあり便通効果があります。最後ですけれど、覚醒作用ですね。これは眠気をさますというのは、お茶の成分のうちカフェインの効用です。中国では、古くからお茶は仏教寺院で利用されて、日本でも伝来以来仏教と深く結びついて発展してきました。その理由は、座禅をはじめとする修行の大敵である「眠気を払う」これはカフェインの効用であるわけですね。世界で千年以上も飲み続けられている茶、コーヒー、ココア、三大嗜好飲料であるといわれていますけれど、これに共通する成分はカフェインです。他に緑茶に含まれるアミノ酸は血圧や神経作用と関係しています。
 日本人は緑茶というのが一番ポピュラーだと思うんですけれども 世界には例えば紅茶とかウーロン茶とか いろんなお茶がありますけれども まずは、日本人とのお茶のかかわりについてご説明ください。
 そうですね。まず、じゃ お茶の学名ですけど カメリア・シネンシスといわれています。これはドイツの植物学者のクンツという方が命名したものですね。これが 今 一般的になっているようです。これは椿とかサザンカの仲間なわけですね。原産地も色々と説がありますが、今のところ中国の西南地方つまり四川とか、雲南とか、貴州のこのような各州ということになっています。漢文化がお茶を漢方としてとりいれはじめたと記録に残っています。さて、日本にお茶がきたのは、栄西禅師により1191年 これは日本の鎌倉時代にあたりますけれど 宋の折江省よりもたらされました。しかしそれ以前に遣唐使や留学僧によって中国で作られたお茶の製品が持ち帰られ、煎じ茶として飲まれていたと考えられます。その後、隠元禅師が1654年 これは江戸時代にあたります に来日しお茶の葉にお湯を注いで飲む、飲み方が伝わりまして、これが 広く日本人に喫茶法として定着いたしました。従って日本のお茶は北の折江省と南の福建省からふたとおりのルートで別々の時代に伝わり、前者がお抹茶、後者がお煎茶となって現在に至っています。日本のお茶の産地ですが、静岡とか、鹿児島とか、三重とかが主な産地ですが、青森から沖縄まで広い地域で生産されています。
 お茶のルーツについて説明していただきましたけれども、お茶といっても先ほど種類たくさんあるというふうに申し上げましたけれども、紅茶とウーロン茶と緑茶の違いについて伺ってみたいと思います。
 皆さんは、紅茶の木とか、ウーロン茶の木とか、緑茶の木とか、それぞれ種類があるかと思われるでしょうが、実は、紅茶もウーロン茶も緑茶も 皆 同じお茶の木で作られています。つまり、製法が違うわけです。紅茶は生のお茶の葉に自然に含まれる酵素を充分に活用してお茶の葉のタンニンを100パーセント酸化させたものです。そのため、葉緑素が分解して褐色になるわけです。ウーロン茶は、紅茶ほど醗酵させない半醗酵茶です。紅茶は、インドのアッサム地方とか、ダージリン地方の茶が使われて、紅茶としてイギリスに渡り、世界中に広まりました。緑茶は、不醗酵茶です。つまり醗酵させないわけですね。酵素の働きを、最初から一切停止させ緑のまま作ります。醗酵を停止させるには、お茶の葉を高温な蒸気に通したり、蒸したり、炒ったりします。
 それでは、最後になりますけれども、お茶とお薬について あの 伺っていきたいと思うんですけれども、よく「お薬をお茶で飲んではいけない」といわれるんですけれども、これはなぜなんでしょうか?
 そうですね。理由の一つは、多くの頭痛薬とか、風邪薬などには、カフェインが処方されています。ところが、茶のうまみ成分であるテアニンは、カフェインの作用を弱くする働きがありまして、お薬中のカフェインの効果を弱めさせるからですね。第二の理由としては、鉄分を含む胃腸薬や貧血の薬やある種の抗生物質は、お茶のタンニンが金属塩と結合したり、お茶の中のミネラルと結合したりして、薬の小腸から血管内への吸収を妨げる結果、お薬の効果を少なくします。そこで、全部のお薬の問題ではないのですが、「お茶で飲んではいけない」といわれてきました。でも、最近の研究では、必ずしもそうではないという報告もありますが、まだお薬は、水またはお湯で飲んだ方が良いと思います。
 特に貧血のお薬については、よく服用しているときにはいけないといわれるのは、なぜなんですか?
 はい。今まではそのように言われてきましたけれど、最近の研究の結果は見直される傾向にあります。薬そのものの製剤方法も大変進歩しましたし、禁茶にする必要はないと思いますね。お茶で服用しなければよいのでは、とただいま見直されています。このように、お茶と同じぐらいの歴史を持つ飲み物は、水のほか、お酒くらいのものですね。世界保健機構 WHOですけれど 「健康とは、ただ単に身体的のみならず、精神的、社会的にも健全でなければならない」とこのように言っています。以上のように、一服のお茶は、身体的健康と精神の安定効果を有する成分を多く含んでいます。栄養価値に加えて、心の栄養といえる精神文化を創り出していますね。ちょっとこれは余談ですけれど、「且座喫茶(しゃざきっさ)」とこういう禅語を聞いたことがありますか?ないですか。これは禅宗の臨済宗を起こした臨済示現による臨済録に出てくることばなんです。意味は、「まあ、とりあえず座って、お茶でも一服」といったようなこういう意味なんですね。臨済宗は前にもお話しました栄西禅師よる鎌倉時代のはじめに日本に伝来しました。このようにお茶は禅宗と深くかかわっています。こういう忙しいこのような時代に「且座喫茶」このことばの通り豊かになりませんか。
 はい、ほんとうですね。なんか、先生のお話のしかたでも、ほんとに心が豊かになったような感じがしました。今日は、「お茶の話」ほんとにありがとうございました。