出演者 飯塚裕子  1999.12.26
 心と体のクリニック今日は四大人参について、お話をお伺いいたします。朝鮮人参が体にいいということは、皆さんよくご存じのことと思います。しかし最近同じ人参でも四つの人参が有るということなんですね。あまり聞き憤れなかったこの人参なんですが、薬局でも最近では見かけられるようになりました。
 このような人参と朝鮮人参はどこが違い、またどんな働きをするのか、今日はお語をお伺いしていきたいと思います。先生宜しくお願いいたします。
 私たち、ふつう生活しているなかで人参といいますとカレーに入っている赤い人参を思いうかべる方が多いと思うんですが、この普通の人参と朝鮮人参を始めとする四大人参、これらはどのように違うんでしょうか。
 赤い人参はセリ科の植物で、カロチンをたくさん含んでいる野菜です。朝鮮人参、西洋人参、田七人参、シベリア人参を四大人参といっています。これらは皆ウコギ科の植物で、いわば家族のようなものです。産地が異なるため名前も性質も効能も少しずつ違っています。漢方薬として使う薬用の人参は、日本では朝鮮人参、高麗人参と呼んでいる朝鮮人参が一般によく知られています。薬用の人参はウコギ科の植物で、まったく別のものです。

 薬用人参は今から千三百年も昔、天平時代に中国東北国で栄えていた渤海国から日本に伝えられ、江戸時代には日本でも栽培されるようになりました。赤い人参が日本に輸入されるようになり、食卓にのぼりだしたのは、文明開化の明治になってからのことです。「朝鮮人参」に似ていたので「にんじん」と呼ばれ、このために漢方薬の「人参」と呼び名が今でも混同されています。中国を始め海外で「人参」と呼ばれているのは薬の人参です。

 人参というと、どんなイメージを持たれていますか。

 そうですね。朝鮮人参なんかですと、やはり疲れたときとか血色が悪いときとかですか、そういったようなときに飲んで、ぐっと元気になる、そんなイメージがありますけれども、どうでしょう。
 人参は、疲労回復や病後の体力回復など、からだの機能を高め、からだを元気にする強壮効果を特徴とします。人参は漢方薬や中国の薬にある強壮薬の一つです。丈夫で疲れず、精カ的に活動し老化の進行をできるだけ防ごうという目的で使われます。
 四つの人参にの中で一番代表的な人参が朝鮮人参だと思いますが、これについてお話をお伺いしたいと思います。
 朝鮮人参の主な産地は、文字通り朝鮮半島です。朝鮮民族の方々が多く住んでいる中国の東北地方でも採れます。昔から朝鮮の、野性の人参が一番良いとされてきました。そのため、朝鮮人参と名づけられたのです。
 私たちが今服用しています朝鮮人参も野性のものなんですか。
 私たちが薬として飲んでいるものは、すべて栽培品です。中国では大昔から一番効く「不老長寿の薬」としてもちいられ、明の頃までは野性の人参を掘って薬にしました。人参の効き目が広く知られるようになってからは、乱獲がひどくなり、ついには絶減の危機に瀕し、そこで大変な努力と様々な工夫が重ねられ、栽培されるようになりました。
 人参の収穫までの期間はどれくらいかかるものなんでしょうか。
 人参の生育遠度は遅く、種をまいてから六年の長い年月をかけてようやく収穫できるようになります。根を掘り出したら、今度はくすりにするための加工を行います。人参はこのように手間と時間をかけて、ようやく「薬」として私たちの元に届くのです。原料となる植物の学問的な名前はパナックス・ジンセングといいます。パナックスというのはギリシャ語で「すべてを治療する万能薬」という意味です。ジンセングは人参の中国語の発音です。日本名はオタネニンジンといいます。人参は非常に高価な薬でした。多くの偽物や粗悪晶が出回ったため、江戸時代に幕府は人参の栽培を試み、その後諸藩に人参の栽培を奨励しました。その種が御種(おんたね)といわれ、その名がつけられました。
 ジンセングというのが人参の中国語の発音だったんですね。日本でも朝鮮人参は今でも取れるんですか。
 日本では、長野、島根、福島県などを中心に盛んに栽培されています。薬として使う人参は、根を掘り出したら生のままでなく加工を行ないます。加工して薬にすることを炮制(ほうせい)といいます。人参をカビや虫から守り、また人参の重要な有効成分であるサポニンを守るためです。また外観も良くなり、長期に貯蔵もでき、使用に便利な形にすることができます。加工された人参の有効成分には、その量と質に変化がみられます。加工によって新たな生物活性が生まれ、それぞれ異なった効能・効果が出てきます。新たな生物活性を生み出すことも加工する目的の一つです。
 続いて西洋人参について教えてください。
 西洋人参は朝鮮人参と同じウコギ科の植物です。北アメリカが原産地で、アメリカやカナダの肥沃な森林に自生しているアメリカニンジンの根を薬として使います。十七世紀末に薬用人参の効用がヨーロッパにも紹介され、十八世紀の初めに、その論文を目にしたカナダ人の宣教師が中国の人参によく似た植物として見つけだしました。アメリカの東部やカナダが主な産地のため、東洋の朝鮮人参に対して、西洋人参と名づけられました。またアメリカの国旗にちなんで別名「花旗参」とも呼んでいます。

 アメリカやカナダで栽培されたものが、中国広東省の広州や香港を経由して東南アジア各地に輸出されていたことから広東人参ともいわれています。ほかに洋参という名前もあります。現在は中国で大規模に栽培されています。

 今、西洋人参が大人気ということなんですが、それはなぜなんでしょうか。
 強カな強壮作用や免疫機能を活性化する作用は朝鮮人参に匹敵しますが、一方で西洋人参には朝鮮人参にはない優れた特性があるからです。強壮作用を持つくすりは頭に血が上ってのぼせ気味になりがちですが、西洋人参は薬の性質が「涼」であるため、体め働きは元気にしながらも、中枢神経を抑制し、沈静化させるのです。薬性が「温」である朝鮮人参とそこのところが大きく違います。  神経を興奮させず、ストレスもとれますから、飲んで一時間もすれば頭がとてもスッキリとしてきます。集中カもつきます。だから、学生、受験生、学者、芸術家など頭をよく使う人や、いろいろとストレスを受けやすい現代人にぴったりの人参といえます。
 今日は、四大人参についてお話をおうかがいしていますが、先ほどは朝鮮人参、と西洋人参についてうかがいましたので、この次は田七人参について教えてください。
 田七人参は、中国の南、雲南省から広西省にかけての海抜1200〜1800mの限られた地域でしか採れない特産晶です。田七人参の素晴らしい効き目と貴重品であることから、かつては「門外不出」で、別名「金不換」お金に換えられないという意味で呼ばれていました。

 他にも「三七」「田三七」など、いくつかの別名があります。根の収穫まで三年から七年もかかるから「三七」という説もあります。田がつくのは産地が広西省田陽、田東だからです。朝鮮人参と同じウコギ科の植物で、朝鮮人参とよく似たサンシチニンジンの根を薬としてつかいます。

 田七人参には、どんな効能があるんでしょうか。
 民間では古くから使われていて「止血の神薬」(神様の薬ですね)ともいわれています。漢方薬としては、16世紀末「本草項目」に初めて載った、朝鮮人参に比べると新しい薬です。特徴は、出血した際に血小板の凝集を促進し、速やかに止血することです。

 ベトナム戦争のときにベトナム軍の兵士が止血のために傷口に使っていた、有名な「雲南百薬」(成分の80%が田七)の効き目に敵軍であるアメリカ軍も驚いたというエピソードがあるほどです。止血するばかりでなく、打ち身や、潰瘍・ガンなど、また血管の破裂などで内出血してしまった血液を流動性のものに変え、または体に吸着させ、体の中に停滞させません。オ血を'改善し、血の流れをよくする「活血」の作用も同時に持っています。「止血」と「活血」という相反する性質が一つの薬にあることが田七人参の大きな特徴です。
 田七人参に含まれている田七ケトンというという成分には、心臓の冠状動脈を拡張させ、血流を増やし、心筋の酵素の消費量を減らす働きがあります。このため心臓の負担を減らします。また血液中のコレステロールを減少させる作用もあり、狭心症、心筋梗塞などの「虚血性心疾患」の症状を解消し、その予防と治療に役立ちます。

 それでは田七人参には、あと他にどのような効果があるんでしょうか。
 もう一つ田七人参が注目される理由に、肝臓への効果があります。特に慢性肝炎には、西洋医学では良い治療法があまりない現在にあって、優れた治療効果を上げています。田七人参には、抗ウィルス作用があること、もう一つは、特異的に肝臓の血液循環をよくする作用があることから肝炎に有効であると考えられています。「漢方のインターフェロン」と呼ばれ、肝臓の特効薬として有名な「片仔廣」の主成分でもあります。
 この田七人参なんですが、ダイエットにもいいと聞いたんですが本当でしょうか。
 肥満を防ぐ作用、その他にも免疫調整剤の働きが確認されています。運動選手に田七人参を服用してもらった実験では、心臓血管系の機能改善とともに、体重コントロール作用もあって、ウエイトコントロールを必要とするスポーツ選手に朗報となりました。田七人参が血流を改善し、体内の脂肪代謝を活発にして、皮下脂肪の沈着を防ぎ、肥満の予防や改善につながると考えられています。ウコギ科の人参類のほとんどは免疫系に対して何らかの働きがあります。田七人参には低下した免疫機能を高め、免疫紬胞を活性化する作用があり、ガン細胞に対しても、それを直接攻撃する力を増強します。また一方、体の抵抗カが増して、ガン細胞の増殖を防ぎ、ガンの治療と予防にも効果があることは実験的にも臨床的にも確認されています。このようにガン細胞を殺す免疫細胞を活性化し、正常な細胞を保護する作用のある薬を免疫調整と呼んでいます。
 四大人参の最後になりますが、シベリア人参とはどんな人参なんでしょうか。
 シベリアは人間が居住できない過酷な寒さの広大なツンドラや大河があるところです。そうした過酷な環境の中においても強い生命力を持ち、そごに自生する植物があります。このような植物は、世界の植物学者からも注目されていました。

 1950年代より旧ソ連邦科学アカデミーの薬物研究所は、シベリアに自隼する植物について、薬用資源になるかどうか調査研究をし、そこで発見されたのが、
シベリア人参の原植物エレウテロコックです。エレウテロコックには人参とよく似た成分が含まれ、強壮効果も人参より優れていると発表して世界中で注目されました。

 1962年、旧ソビエト連邦保健省はエレウテロコックの根から抽出しだエキスを強壮剤・医薬晶として使用することを承認しました。エレウテロコックは朝鮮人参、西洋人参、田七人参と同じウコギ科に属する、落葉低木で、その根が薬用部分です。ロシアのシベリア地域、中国黒竜江地域、日本の北海道、朝鮮半島などに生育しています。

 1980年代には中国黒竜江省などでも良晶が栽培されるようになりましたが、シベリア地域に自生するものが最も上質とされることから、シベリア人参という呼び名がつけられました。、シバリア人参には、朝鮮人参より優れた「環境適応源」(アダプトゲン)作用があります。ここでいうアダプトゲンとは、体にとってあらゆる種類の悪影響を与えるもの、例えば、酸素欠乏、厳しく激しい寒冷、ストレス、疲労、放射線などに対する生体の適応能力を高め、生体を保護しようとする作用を指しています。特にストレスに対する抵抗力の増強が注目されています。しかも科学者たちは、ストレスから生き残った動物たちを解剖して、ストレスステロイドの使いすぎによって発生する副作用の徴侯を確かめました。そして、傷ついた胃、肥大した副腎、萎縮した胸腺などが、エレウテロコックを与えた動物では殆どみられないことを見つけました。環境に対して早く適応する能力をたくわえ、ストレスに耐える必要があるからです。
 かつてソビエト(現在のロシア)のオリンピック選手も愛用していました。現在スポーツや激しいゲ丁ムをやる人達が大会や試合の前に飲んでいることはよく知られています。この成分を含んだスポーツドリンク、清涼飲料水もいくつか販売されています。今はそれぞれの人参が、お茶のかたちで販売されていますから、お薬という感覚よりも、その日のコンディションにあわせてお茶の感覚でお飲み
になってもよろしいかと思います。

ありがとうございました。