出演者 佐久間美典 1999.04.25

よく最近耳にします環境ホルモンという言葉なんですが、そもそもこの環境ホルモンとはなんでしょうか?

ええ、最近ですね、新聞やテレビで環境ホルモンという言葉を耳にする事が多くなりました。1996年にコルボーン他の著書「奪われし未来」という本が発売され、環境化学物質によって内分泌撹乱作用が注目されるようになりました。正式な名称は、内分泌撹乱物質と呼ばれ、これが体内に入って正常なホルモンをかき乱し流産や精子数の減少といった、生殖異常を引き起こしてくる訳です。つまりオゾン層の破壊や、地球温暖化、などの地球環境問題はですね人類が生きていけなくなる可能性を秘めた重要な問題であるわけですけども、環境ホルモンの危険性というのは、私達が子孫を作れなくなってしまうかもしれないという人類にとって最も直接的な問題となるわけです。

環境ホルモンというのは'97年の5月NHKの科学番組で使われました和製造語ですが、解りやすい観点から新聞・テレビでは勿論の事、書籍・インターネットにも登場し注目を集めているキーワードの一つとなっているわけです。

そうすると環境ホルモンというのは、一つの物質ではなくいろいろなものという事なんでしょうか?
そうですね。
そうしますと、そのいろいろな物質、具体的に例を挙げると、どのようなものが環境ホルモンと呼ばれているのでしょうか?
ええとですね、農薬が最も多くて、防腐剤とか除草剤に使われているPCPと呼ばれるペンタクロロフェノール、あとは有機塩素系の殺虫剤に使われているクロルデン、DDT、シロアリ駆除剤・木材処理剤などに使われいるHCH、BHCと呼ばれているヘキサクロロシクロヘキサン、それから有機塩素系殺虫剤に使われている、アルドリンやエンドリン、ディルドリンと呼ばれているもの、それと界面活性剤のアルキルフェノール、これはラップの添加剤とかインクとかニスとか洗剤に使われているわけです。

それと、食器や哺乳瓶に使われているポリカーボネイト樹脂、赤ちゃんのおもちゃ用プラスチックの可塑(かそ)剤のフタル酸エステル類、それと熱媒体のダイオキシン類、PCB類、それに船底塗料、魚網防護剤のTBTと呼ばれるトリブチル錫(すず)、重金属の水銀、カドミウム、鉛など数多くの化学物質です。

またですね、ホルモン剤や化粧品に含まれている成分についても内分泌撹乱作用のある成分が含まれているという報告がありますが、まだはっきりした事は判っていません。

そうしますと、私達の生活に様々な形でこの環境ホルモンが関わってきていると思うのですが、種類にしますと、どの位の数が有るんでしょうか?
ええと、ダイオキシン・PCB・DDT・DES・有機錫など、人工的に合成されて産業を支えてきた約70種の化学物質に、現在環境ホルモンとしての毒性が確認されているわけです。

しかも、地球にはまだ影響が詳しく確認されていない、数百万種類もの人工化学物質が溢れている訳です。そして私達現代人は生まれたときから環境ホルモンの洗礼を受けている訳です。

それでは、この環境ホルモンなんですが、私達の体の中でどの様な作用をするんでしょうか?
体の中で脳下垂体・視床下部・甲状腺・胸腺・副腎・腎臓・膵臓・卵巣・精巣等の分泌器官からホルモンが分泌されているわけなんですけども細胞に作用する場合にホルモン受容体というのがあるのですが、それに結合して細胞質の真ん中にある核に入って、DNAの受容体識別配列として転写を活性化するという事なんですけども、mRNAという核酸が出来て、それを元に蛋白を合成した結果として、ホルモン的な作用をするわけですね。

すごく難しい事なんですけども、例えばですね、自分の部屋のカギを環境ホルモンに例えると、同じカギを持っていって、そのカギをこじ開けて本人と同じ事をしたり、本人がしない事をやってしまうという事なんですけども、例えば一日中テレビを付けっぱなしにしたりとか、エアコンを付けっぱなしにしていたり、そうするといろんな影響が出てくるという事ですけども、電気代がかさんでしまったりとか、余計な出費が出てしまったとかという事になるんですけども、それが環境ホルモンの作用という事なんですね。人体にガンを発現したり、生殖異常という事が起こるわけです。

そうすると、かなり困った事をするものという風に認識できると思いますが、今お話にも出てまいりましたけど、これは生物に対してどのようない影響を及ぼすのでしょうか?
人体に対し最も注目すべき影響というのは、精子数の減少というのが挙げられます。フランスにおいては'73年に1ml当たり8900万個あったものが、'92年には6000万個程度に減少してしまったわけです。

日本でもですね、慶応大学医学部の調査では40年前に8000万個以上だったものが、現在では1割ほど減少しているわけです。また切迫流産の予防や治療薬にも使われていた、ジエチルスチルベストロール(DES)と呼ばれるものですけども、これを用いていた母親の子に異常が見られたわけです。女の子は思春期頃に膣の腺癌、男の子は性器形成異常の頻度が高まった事です。

本当に人類の繁栄といいますか、子孫の繁栄にかなり影響が出るという事ですが、やはり、これは他の生き物に対しても影響が有るんですよね?
そうですね。野生生物に対する影響というのは船底や魚網に付着する貝類や藻類を防止する目的で用いた有機スズ(TBT)によると思われる貝類の一種、イボニシの生殖異常すなわち、メスにペニスや輸精管が生じ、輸卵管が塞がる雄性化、いわゆるインポセックスが日本をはじめ世界各地で見られています。その他、アルキルフェノールによるコイ・ニジマス、ノニルフェノールによるメダカの雌化、アメリカ・フロリダ州のワニのペニスの縮小、これはDDTやDDEによる影響と思われています。

鳥類の孵化(ふか)率の低下、カモメの雌化、これはDDTSと呼ばれているもの等、環境中に放出された化学物質の女性ホルモン様作用により、オスがメス化する例が多いわけです。

日本においては環境ホルモンと言いますと、どうも最近報道が多いダイオキシン、このダイオキシンについて真っ先に思い浮かぶんですが、このダイオキシン名前は聞きますが、どの様なものかいま一つ判らない方が多いと思います、このダイオキシンとはどの様なものなんでしょうか?
商業目的では生産されていないんですけども、有機塩素系農薬等、化学物質の合成過程や廃棄物の焼却過程等で非意図的に生成される化学物質です。

ダイオキシン類は有機塩素系の化合物で3種類有るわけですけども、1番目はダイオキシンと呼ばれるもの、2番目はポリ塩化ジベンゾフランと呼ばれるもの、3番目はコプラナーPCBと呼ばれるもの、これらを総称したものです。

ダイオキシンというのは、ベトナム戦争で枯葉剤として用いたものに不純物として含まれていたわけですね。それが住民周辺に先天異常児が生まれたり、死産や流産が多発したわけです。毒性は1グラムで17000名の人を殺すほどの強いものですね。ですから青酸カリの1000倍と言われて、史上最強の毒性を示しているわけです。

また、このダイオキシンは環境ホルモンの一種でありますから、超微量でほとんどのホルモンに影響を与える事が知られています。日本で発生するダイオキシンの8割以上が都市のゴミ焼却炉から排出され、飛灰による土壌汚染、排ガスによる大気汚染をおこしているわけです。なんといっても、大気中の濃度が欧米の10倍、母乳中の濃度は世界でも高濃度を示しているわけです。

この最大の原因はゴミの分別収集の不徹底、それと低温による不完全燃焼並びに、食物連鎖で生物濃縮された魚介類・食肉の摂取量を反映しているわけです。

1グラムで17000人ものの人を殺してしまうような、強い毒性を持っているダイオキシンという事なんですが非常に少ない量で影響を及ぼすというお話も今ありましたが、このダイオキシンの濃度、基準となっているのはどのぐらいの量なんでしょうか?
ダイオキシンの濃度というのはすごく小さい単位なんですけども、1グラム中の含有量の濃度は1pptと表されるわけです。重さの単位は1pg(ピコグラム)これは1兆分の1グラムと示されているわけです。基準は世界に比べてですね日本は10年も遅れているわけなんですけども、WHOは1990年動物実験を基に体重1kg当たり1日10pgという値を提唱しました。これは1日耐容量といいましてTDIと言われるわけです。

これは1日摂取しても安全であるという値なんです。厚生省では1996年の6月に10pgというTDIを設定して、更に環境庁では1997年の5月に5pgを設定したわけです。ところが、1999年1月にまとまったWHOの最終報告案は1日当たりのTDIを1〜4pgに設定したわけです。

日本でも先月ご存知の通り大問題となり、規制を強化すると共に、厚生省と環境庁との食い違っているダイオキシンの濃度の安全基準を統一する、またそれを2〜3ヶ月中に新たなTDIを決定するそうです。

お話の中にpg(ピコグラム)という単位が出てまいりましたが、もう一度このpg(ピコグラム)どのぐらい小さい単位なのか、教えていただけますでしょうか?
グラムやミリグラムまたはトンという単位は実感できるでしょうけど、ピコグラムという単位だと見当がつかないと思います。1g(グラム)の1000分の1は1mg(ミリグラム)ですよね、その1mgの1000の1が1μg(マイクログラム)このときの濃度がppm、これは聞いた事があると思いますけど、つまりこれは1gの100万分の1と言う小さな単位になるわけです。それで1μgの1000分の1は1ng(ナノグラム)つまり1gの10億分の1、そして1ngの1000分の1が1pg(ピコグラム)、これが1gの1兆分の1、超天文学的な分母を持つ重さを表す単位となります。

これは重さで実感できない単位なので、これを長さで表してみると判りやすいかもしれません。

食中毒を起こしているO-157で有名になった大腸菌ですね、これは長さ1μm(マイクロメートル)、幅が0.7μmの大きさで院内感染や、食中毒を起こすブドウ球菌これは直径が1μm前後の球状のバクテリアです。バクテリアより小さいウィルスになりますと、風邪の原因になりますインフルエンザウィルス、これは直径が100nm(ナノメートル)ぐらいの球状をしております。

こうした単位がですね、如何に微小なものかを知るために、逆に大きくしてみると判りやすいかも知れないですね。

1mをですね1000倍しますと1km(キロメートル)になりますよね。この1pm(ピコメートル)の1兆倍が1mですから、一兆倍しますと10億kmになります、つまり地球から月までの距離が35万kmになりますから、地球と月を1往復してもまだお釣りが来てしまう距離ぐらいの長さになるわけです。こうして見ますとpm(ピコメートル)という単位が如何に小さな長さの単位にであるかと理解出来ると思います。

同じようにですねpg(ピコグラム)という単位も如何に小さな重さの単位であるという事がよく判っていただけると思います。

ここまでお話を伺っておりまして、環境ホルモンって本当に怖いものなんだなって風に改めて実感させられた訳なんですが、私達に出来る環境ホルモン対策って何かあるんでしょうか
まず環境ホルモンとなる化学物質を作らないようにする事が絶対に必要でしょう。

その為には企業が環境ホルモンとなるような化学物質の製造を中止したり、環境ホルモンを含んだ製品の見直すべきです。こうした企業の対応について政府による規制と監視も必要となってくるでしょう。しかし、企業や政府の対応を待っていたのでは環境ホルモンに汚染してしまうわけです。自分で環境ホルモンによる汚染から身を守るには7項目有ります。

一つ目は環境ホルモンが含まれているのが明らかなものを知って、その上でよほどの事が無い限り使わないという事。

二つ目は子供の食事に気を付ける。

三つ目は妊娠中の母親は殺虫剤などの化学物質を避けて、食事を気を付ける。

四つ目は安全な水を飲むという事ですね。出来れば水道水を蒸留して飲まれるといいと思います。

五つ目は魚とか肉類を気を付ける。

六つ目は有機栽培の野菜や、果物を手に入れる。

七つ目はプラスチックの安全性を確認するという事ですね。

ただ、私達一人一人が環境ホルモンに対して低濃度で人体に害を与えてしまうという事を考えながら、個々の人がなるべくゴミを出さないという事、分別収集もきっちりとして、リサイクルについても考えていくべきでしょう。

また、食物連鎖についても考えるべきだと思います。国は食物の摂取は避けることは出来ないので国民に何か何に注意すればリスクが減らせるのか、それを判らせてあげる事が必要だと思います。

化学物質の予想摂取量とその摂取経路の説明は特に重要な問題となります。このように環境ホルモンは野生生物種の撲滅や、正常な食物連鎖を否定し、その結果人間の存亡に関わる大きな警鐘と考えるべき問題です。

これからの将来に対して負の財産を残さないように、利便性を追求した現在の経済社会を考えるべき時代になってきたわけです。

先程もお話しましたが、一人一人が環境ホルモンについて考え、ゴミ問題やリサイクルについて家庭の中でも話し合い考えて、出来る事からやっていくべきでしょう。

どうもありがとうございました。
ありがとうございました。