出演者 長谷川祐一  1998.09.26
 毎週第四土曜日はお薬の話を伺っています。今日の心と体のクリニックでは薬物乱用を巡る最近の話題、特に最近話題となっていますバイアグラのお話も伺っていきたいと思います。先生よろしくお願いいたします。
 よろしくお願いします。
 さてこの薬物乱用なんですけれども、最近は単に乱用者自身の身体的、精神的な問題にとどまらず、社会的な問題にも発展しているんじゃないかなと思うんですよね。

 たとえば青少年の乱用の兆しというのも非常にありますので、テレビCMやポスターなどでその訴えかけ、ストップの訴えかけがよく目に付くんじゃないかなと思うんですけれども、具体的に薬物乱用というのはどういったことをいうんでしょうか。

 今お話ししていただいたように、若い人たち、特に中学生、あるいは高校生にまで、その薬物乱用の危険な波が押し寄せているということも、社会的事実でございます。

 特に乱用っていうのはですね、医学的、あるいは薬理学的な概念ではなく、社会的なルールに違反した使用を指します。従ってですね、例えば未成年の飲酒も乱用ということになります。

 乱用には医療以外の目的に使うこと、違法に使うこと、必要でないとき、あるいは必要のない量を使うこと、医療が需要できる範囲を超えた多くの量を絶えず、または時々使うことが該当します。

 なるほど。結局薬物というのは、何か病気を治すために使っているような薬というのもあるんですが、それをたくさん服用してしまうというところに問題があると思うんですけれども、乱用されやすい薬物というのはどういったものがありますか。
 乱用されやすい薬物としては、アヘン類、例えばモルヒネ、コデイン、コカインというものがあります。

 それから麻酔薬によく使われるバルビツレート類、それから皆さんも飲んでいらっしゃると思いますけど、アルコール、それからベンゾジアゼピン類ということで、これは催眠薬が多いと思います。それから安定剤の仲間もそれに入ります。

 それから有機溶剤、これはシンナーとかトルエンといったものがあります。そして大麻、これはよく芸能人なんかで検挙されることが多くて報道されるんですけども、大麻というものがあります。

 それからアンフェタミン、これは覚醒剤として使われています。使われているというか、覚醒剤として検挙されるだろうということですね。その他LSD、ニコチンもその内容に入るということになります。詳しくはいろんな書物が書いてありますので、それを見られるといいと思います。

 ニコチンも、薬物乱用に入るっていうのはちょっとセンセーショナルなお話ですよね、喫煙者にとっては。
 そうですね、ただ社会的に認められているものもございますので、これは未成年者が吸う場合には乱用になりますね。ただ成年がきちんとした社会的ルールの元に使えばこれは合法というふうになります。
 こういったものを乱用することによって、例えば習慣性、要するに依存ですよね、依存してしまうようなものも中にはあるんではないかなと思うんですよね。この依存症で恐ろしいということっていうのは、どういったことなんでしょうか。
 薬物依存性の恐ろしさという点ですね。これは二つ考えられると思うんですが、

 一度ある薬物を乱用すると、精神依存の状態になって、薬物を止められなくなります。続いてですね、これらの薬物には精神や体を傷害する作用があるっていうことなんです。例えば覚醒剤ではですね、妄想幻覚を主たる症状として、精神分裂病のような症状があらわれます。

 この他に摂取をやめたいんだけどやめれなくなるといった、精神依存の状態が続いてきますので、体が傷害されるとわかっていても悪循環でだんだんだんだんそれがやめれなくなるということになります。最初安易にですね、やせるからとか、気持ちよくなるからといった言葉にだまされて使った状態で、一度始めますと、この循環が繰り返されます。

 これから脱出できるのは、ほとんどの人がいませんので、大変恐ろしいものになっております。

 これらがだんだんだんだん悪くなる循環を繰り返しますと、まずは病気になります。それから職を失います。また、結婚している方なんかは離婚をされたり、子供さんいられる方でも家庭が崩壊したり、それから罪のない人を巻き込んだ傷害事件などを起こしたりする、犯罪を引き起こすといった、社会的な現象も起こってきます。

 そうですよね。それ以前に破産するんじゃないかとも思うんですけども、やっぱり薬物を手に入れるには、それなりの金額があるんじゃないかと思いますので。
 そうですね、合法的に薬物を手に入れればきちんと社会保障がありますから、そんな金額いらないんですけども、非合法にやりますと、莫大な金額ができてきます。でもこれはやはり、やらない方がいいということが一番大事であって、お金の問題ではないと思いますけど。
 それからもう一つ、弊害があるんじゃないかと思うのは、お母さん、母親になる人が薬物を乱用することによって、産まれてくる子供になにか障害があらわれてしまうんじゃないかっていう心配があると思うんですが、それはどうですか。
 これはですね、お母さん、つまり母親が薬を使うと、その影響が胎児を通して子供にでてくるっていう、生物学的な現象が現れております。アメリカでいうコカインベイビーというのがその例だと思いますけど、大変残念なこと、悲しいことだと思います。
 そうですね。そうならないためにも、薬物というのは正しく服用するというか、そういったことを広めていらっしゃるのが、先生のような薬剤師の方々の役目ではないかなと思いますので。

それでは曲を挟みまして、いよいよ話題のバイアグラについてお話を伺っていきたいと思います。

 今日の心と体のクリニックでは、薬物乱用を巡る最近の話題ということでお伺いしていますが、それでは早速話題となっていますバイアグラについて伺っていきたいと思います。

 リスナーの皆さんもバイアグラという言葉、一回は聞いたこと必ずあるんじゃないかと思うんですが、最近でも某タレントさんが沢山服用しすぎまして、救急車で病院にかつぎ込まれて九死に一生を得たというようなお話もあるんですけれども、このバイアグラというのは、どういった薬なんですか。 

 一般名はですね、クエン酸シルデナフィリンというお薬でして、キサンチン化合物となります。このキサンチン化合物ってちょっと難しい言葉なんですが、カフェイン、テオフィリン、テオグロビンといった、そうですね、皆さんがよくお飲みになるコーヒー、紅茶、あるいはココアの中に入っている成分の仲間でございます。
 なるほど、そうすると興奮剤というのも変なんですけれども、そういった、ちょっと気持ちを興奮させる作用があると考えていいわけですよね。
 いえ、そういうことではありません。これはよく誤解されているんですけども、精力剤として使われている部分、これを飲むと元気が出るぞ、みたいな形でいわれているんですが、それはそうではございません。

 バイアグラの作用機序としましては、海綿体への血流の増加ということがございます。これはですね、海綿体によって、男の方でしたら勃起状態というのを作ると思うんですけども、この海綿体への血流増加ということが一つの作用になっています。

 元々は狭心症の治療薬として開発されたというのは伺ったんですけれども。
 そうですね。血流を増加させるということは、血管を拡げるっていうことなんですね。ですから血管を拡げることによって、目的とする作用がでてくる訳なんですけど、もう一つ困ったことに副作用がでるんですね。血管を拡げることによって、血圧の低下が起こるんです。急激な変化でございます。
 血圧が低下するっていうのは、体にとっていいことではないんですか。
 一般にはそういう風に思われがちなんですが、心臓の治療を行っている方々が急激な血圧の低下をすると、心臓へ酸素や栄養を送っている血管が詰まってしまうという状況が起きます。これは大変危険な状況で、死亡例も、そういった例からきてるんではないかというふうに言われてます。
 世界中でバイアグラの服用によりまして、だいたい何名ぐらいの方が命を落としていらっしゃるんでしょうか。
 そうですね、今報告があるものは16例というふうに言われてます。日本の国内でもですね、一例の方、これは先ほどちょっとふれたんですけども、狭心薬の治療剤を使って、これは貼付剤というふうに貼り薬ですね、それを使っている方なんですが、それの相互作用で一人亡くなっています。
 このバイアグラという薬なんですが、アメリカではおそらく承認されているものだと思うんですけれども、日本ではまだ認められてないものですよね。
 そういう点から言いますとですね、先ほど言ったこれを使うということは薬物乱用というふうになります。特に友達にこれ効くからとあげたりする事は罪になりますね。
 例えばこういったものを手に入れる方っていうのはよくインターネット上のホームページから売買して買ってらっしゃるということも聞いたんですけども、これを人に売るというのは違法行為となるわけですよね。
 売ったり、あげたりしてもだめなんです。ですから極めて、もうすぐですね、来年度、四月頃になると思うんですが、その頃になりますと日本でも発売する見通しになっていますので、それまではあまりこういったものは皆さんの理性で使わないようにしたいと思いますが、いかがでしょうかね。
 わかりました。一時の話題、うわさ話でちょっと服用してみようかななんていう気持ちから、ちょっとした間違いが起きたりすると、本当に大変なことですのでね、是非来年になってから服用されることをおすすめしたいと思います。
 その際はですね、お医者さんとかですね、薬剤師の指導を受けて、正しくお使いになることが大切だと思います。

 ちょっと触れておきたいんですが、このバイアグラの副作用は先ほど言いましたように血圧の急激な低下による狭心症発作、あるいは心筋梗塞の発現なんですけども、またいろんな副作用も言われています。

 頭痛ですとか、顔面紅潮、及び消化不良といったものが云々というふうに、沢山ございます。そして、この薬と一緒に使うことによって、この効果を増大させてしまう相互作用が一番やはり怖いと思います。

 この相互作用を起こすのは一部の消化性の潰瘍の治療薬、それから抗生物質、それから抗真菌剤、これらがこのバイアグラの作用を増大させるというふうに言われてます。

 それから結核の治療剤も一部そういうことになっていますね。作用部位から推測しますと、肺とか血小板に作用するというふうにいわれてますので、血小板の治療薬、特にそういった人たちは、使わない方がいいと思います。

 それからキサンチン化合物ですので、喘息の治療を行っている方、これもやはり喘息治療剤の効果をですね、必要以上に高めてしまうという恐れもありますので、慎重に使わなければいけないお薬だなと思います。ですからこういうことを考えますと、お医者さんとか、薬剤師の管理の元に、正しく使われるということが必要になってくると思います。

 なるほど、わかりました。

 それでは今日の薬物乱用についてのまとめの話に移りたいと思うんですけれども、やっぱりこの乱用を防ぐためにはということで、ちょっとお話を頂けますでしょうか。

 薬はですね、有効性と安全性が担保されて初めて有益なものとなります。

 有効性と安全性を保つために、作用の情報と副作用の情報がきちんと使う人に伝わることが大切だと思います。そのためには薬剤師さん、あるいはお医者さんからちゃんとした使用に当たっての情報をそして加えてですね、安易にですね、こういった薬物を使わないという習慣、あるいは啓蒙を子供さんたち、あるいは青少年の方と一緒にですね、考えていかなければいけないなというふうに思います。 

 そうですね。それから薬剤師さんとしての役割というんですか、そういったものがどんなところにあるんでしょうか。
 我々薬剤師はですね、薬のいい面を引き出すという使命もございます。もう一つですね、薬の悪い面、あるいは悪い芽を摘む、社会的に摘んでいかなければならない使命もございますので、これらを我々も考えながら今後行動、あるいは活躍していきたいと思います。
 そのためにもいろんなシンポジウムですとか、そういった活動をされていると思うんですけども、例えば青少年向けには何か活動っていうのはあるんでしょうか。
 8月の20日なんですが皆様に覚醒剤のあるいはシンナーの乱用を防ぐという啓蒙活動で、皆さんにパンフレットやビデオを配ったりして、絶対こういったものをやらないようにということで、「だめ、絶対」運動というのを行っております。
 これからもそういった薬物乱用についても薬剤師さんの活動、期待したいところですよね。  ありがとうございました。