出演者 時田完司 1998.5.23

 前回 漢方薬の基礎知識につてお話しいただきましたが、その中で漢方薬は健康保険適応となっておリ病院医院においてかなり使用されているということでしたが、だいたいどのくらいの先生が漢方薬を診療に取リ入れているのですか。

 ある医療雑誌が行ったアンケート調査を元にお話しいたします。その調査によると、77%、8割弱の先生が何らかの形で漢方薬を診療に取り入れているそうです.
8割弱、そんなに多くの先生が使用しているのですか。
 ええ、このアンケートでは診療形態別、つまり診療所とか中小病院・大病'院別に集計をしているのですが、診療所と病院との傾向に差はなく多くの先生が使用しているようです.また、病院の先生を大学病院・国公立病院および民間病院に分類して検討しますと、回答した先生の数に差はあるのですが民間病院より国公立病院、国公立病院より大学病院の先生の方に漢方薬への積極的な姿勢が確認できました。
 そうなんですか意外ですね、大学病院の先生というと若手の先生も使われているのですか。
. そうですね、どのくらいの先生を若手といえるのか難しいと思いますが、この調査では、40歳代以下の先生と50歳代以上の先生に分けて比ぺています。それによると両者の間に差はなかったようです。
 私は年輩の先生が、漢方を使う機会が多いのかと思っていました。
 そんなことはないようですね、アンケートの回収率をみましても若手の先生の方が50歳以上の先生に比ぺて約20%も高く、漢方薬に興味を持つ先生が多いことが伺えます。
 先生方はどのようなきっかけで漢方薬を使用し始めているのですか。
 一番多'かった回答は「西洋医学的治療で十分効果が得られなかったから』となっておリます。これは先日もお話しいたしましたとおり、西洋医学的治療が向く病気と漢方治療が向く病気があるのですが、原因の特定できない慢性の病気、体質がからんだ病気には漢方が向くことが多いため、このように考えた先生が多かったのだと思われます。そのほかの回答では「医師会とか製薬メーカーなどが主催する勉強会に参加して」とか「学会などで漢方薬が認められるようになったから」などが多いようです。また、患者さんからの強い要望があったから」という回答も少なからずありますので、患者さんの漢方に対する意識が強いことも伺えます。
 どのような疾患に;漢方薬が使われているのですか。
 漢方薬を使用する疾患として一番多かったのは感冒・上気道炎、風邪ですね。風邪の初期は漢方薬が治療に向いています。先日お話しいたしました、自覚症状や他覚的所見から得られる情報によりその患者さん特有の「証』を決定し、その症状によっていろいろな処方が使用されています。例えば、鼻づまりに効果
のある処方や空咳によい処方、あるいは風邪の症状はなくなっているのに何となくからだがだるいというときに使う処方というように風邪を引いてからの時期や、様々な症状にそれぞれあった処方が使われているものと思われます。
 単に感冒・上気道炎といっても、患者さんのそのときの状熊や症状によっていろいろな処方が使い分けされているのですね.
 そのとおりで、いろいろな対応が可能なことも漢方薬の特徴といえます。次に多かったのは、肝炎・肝疾患でした。この疾患は、西洋医学的にも治療が難しい疾患でして、'内服薬では効果のある薬が少なく漢方薬がよく使われております。先ほど「学会などで漢方薬が認められるようになったから漢方薬を使用するようになった」という回答が多かったようですが、肝炎・肝疾患に対する漢方治療の学会での発表は非常に多く、多くの先生方によリその効果が確認されているため使われているものと思われます。
 その他にはどのような疾患に多く使われていますか
 更年期障害とか自律神経失調症のように、各種の検査を行っても異常がないのに自覚症状があるという疾患です。西洋医学では、検査で異常がないと診断がつかず治療に困ってしまうのですが、漢方治療はこういう不定で多彩な訴えを持つ患者さんに対しても心と身体の両面から患者さんを診断し治療法が導かれるという特徴があります。
 漢方治療を取り入れた先生方はどのような感触を得ているのでしょうか。
 6割以上の先生が取り入れて『よかった』と評価しており、「よくなかった」と回答した先生は、1%にも満たなかったようです。「よかった」と回答した先生の理由は、「西洋薬と漢方薬の併用を含め薬物療法の選択の幅が広がった』ことをあげており、それぞれの向き不向きをうま<使い分けて治療に役立てていることが伺えます.その他では、「治療効果が上がり患者さんに喜ばれた』という回答が多かったようです。
 先ほどのお話の中で漢方薬を使用するきっかけの一つに『医師会とか製薬メーカーなどが主催する勉強会に参加して」という回答がありましたが、医学部では漢方医学の講義はないのですか。
 最近では講義に取り入れている大学も数多くありますが、以前はあまりありませんでした。ですから現在漢方薬を使用している先生方のほとんどは、医学部を卒業された後、漢方の勉強会に出席したリ、書籍を読んだり、あるいは漢方の家と呼ぼれる先生を師事して学ぷなど熱心な先生方が多いようです.
 現在の医学生に対する漢方教育はどのようにされているのでしょうか。
 やはり先ほどの調査をした医療雑誌社が、全国の大学医学部・医科大学にアンケートを採っていますのでそれを元にお話しいたします。その調査によると32%の大学が「漢方医学の教育を実施している』と回答しています。また「なるぺく早く実施する予定」「予定はないが実施したい』を含めると、回答した大学の3分の2が漢方教育の実施を肯定的に考えている結果がでています。
 まだまだ漢方教育が少ないようですね。
 そうですね、しかし「実施の予定がない」と答えた大学も『時聞的に余裕がない」「漢方医学を教える教官がいない』という理由が多く、消極的な理由からではないようです。実施大学の学生の評価をみてもおおむね好評であり、また、指導する側も「卒前教育で漢方医学の正しい知識を教える必要がある」『漢方医学は臨床上必要である」という回答が多く、これから多くの大学の間で漢方医学の教育が普及していくものと思われます。ちなみに 福島県立医科大学でも漢方医学教育について やはり先程、ご紹介しました医療雑誌社に乗っている記事がありますので紹介しますと 基礎薬理学の中で講師の高野先生が、3年生対象に90分1コマの漢方医学の講義を昭和59年からされていらっしゃるようです。また 平成2年より大学において漢方医学研究会を定期的に実施しているという記事もありました。
 漢方医療の現状をお話いただきました。先生方は8割ぐらい漢方薬を取り入れていると言うことで私達の生活の中にも徐々に入ってきていると思います。次回もお話を伺っていきたいのですが、ここで ラジオを聞いている皆さんの中に漢方薬に対する質問があると思うんですよね。もし、ありましたら 時田さん宛てに ぜひこの番組宛てに お寄せいただきたいと思います。