出演者 長谷川祐一 1997.6.27

 いわき地方も梅雨入りいたしましたけれども、気温も上がりジメジメした季節になってきました。このような季節になりますと食中毒やカビにより悩まされる方が多くなってくると思われます。そして当然これらを避けるための手段として消毒剤を使用する使用する機会も増えてくるでしょう。そこで今日はこの身近な消毒剤についてお話しを伺ってまいりたいと思います。先生どうぞよろしくお願いいたします。

よろしくお願いします。
その、身近な消毒剤なんですが今日はどういったお話を聞かせていただけますか? 
消毒剤はその使い方や使うときの条件によって、効果が違うのは消毒剤に限らず薬剤一般に云える事です。しかし私どもが日常の業務の中で感じることは、患者さんに限らずそれをとりまく家族の方から果ては医療に携わる専門の方に至るまで消毒剤の使用法に誤解が多く、誤った使い方をしてその効果を台無しにしているということを感じています。
そうですか、例えばどういった間違えた使い方というのがあるんでしょうか?
イソジンガーグルといううがい薬はご存知でしょうか?
ええ、あのよくカゼを防止するためにガラガラっとうがいする茶色のうがい薬ですよね。
そうです。この薬はですね、カゼのウィルスをはじめとしてさまざまな病気を引き起こす細菌やウィルスに有効な消毒剤であるポビドンヨードという成分を口の中で使えるようにした薬剤です。一般にはカゼの予防や感染に対して抵抗力の無い方に菌が病気を引き起こすことの無い様にするためなど広く一般に使われている、いい薬なんですよ。
ああ、そうですか。あの、どういった処で間違っている使い方なんでしょうか?
ええと、この薬を使っている患者さんや一般の方々に実際の使い方を聞いてみますと、多くの方が誤っているんです。それは、最初に触れましたけど消毒剤は使い方や、使うときの条件によってその効果が大きく変わります。大きな要素として、使用する時間、作用させる温度、そして作用させている時間の3つが重要になってきます。まず使用する量ですけど、この薬は使用に当たって独特の臭みや味がするためにこれがいやだと言って、200ccのコップですと1滴ぐらいしか垂らさないでうがいしている方が多く見られます。
ええ、実際にちょっとね、臭いが気になりますね。
まぁ、適切な使用濃度は2〜4ccを60ccの水で15〜30倍ぐらいに薄めて、これを使うのが適正な使用濃度と言われています。これを一滴を0.1ccと考えても、20〜40倍も足らない様な濃度で使ってるって事がいえると思います。
ええ、そうすると折角うがいしてもぜんぜん効果が得られないということですか?
ええ、更にですね、うがい薬などを作用させる時間の問題なんですけども、多くの人はちょっと口に含んで出してしまいますよね。確かにある程度残存する消毒剤に効き目も期待できるんですけども、作用させる時間が短すぎるという事がいえます。少なくとも15〜30秒はうがいしてなければいけません。
そうですか。あと、先程温度とおっしゃっていましたが?
ええ、まぁ今の季節はいいのですけど、水道水の水温が下がる冬場など、そういった季節になりますと消毒剤の効き目を損なう可能性があります。すなわち温度の問題なんですが、消毒剤にとって適切な温度は20〜30度ぐらいです。20度以下になりますとその効果が減弱するといわれています。
そうですか。ええと、そうしますと温度は高ければ高いほど良いのでしょうか?
あの、温度が高ければ高いほどいいのか、作用時間が長ければ長いほどいいのかという事になりますけど、薬ですから副作用もあります。イソジンの場合、組織を傷つけるような働きがあるとも云われていますので、先程言ったように適切な時間、適切な温度で使われなければならないと思います。もう一つ付け加えさせて頂きますと、この消毒剤は汚れによっても効果を損なう事も有りますから、食事の後とか、外から帰ってきたときなどは、汚れが多いと思われますので、一度口の中をゆすぐなど汚れを落としてからうがいをする事が良いと思われます。
そうですか。あのイソジンだけでも十分消毒になると思いますからねぇ、そのままやったほうが効果が得られるような気がしますが。
より高い効果を引き出すために皆さんも努力する事が必要だと思います。よく判らない点がございましたら、薬剤師に尋ねるようにしてください。
今、イソジンガーグルについては良くわかる説明を頂きましたが、その他にも身近な消毒剤があると思いますが、どういったものがありますか?
それではですね、アルコールの事をお話ししたいと思います。アルコールには皆さんもご存知のようにメタノール、エタノールと聞く名前があると思います。メタノールは殺菌性が弱い反面、毒性が強いので消毒剤には適さないと言われています。消毒用に広く使われていますのは人体に対する毒性が他の薬剤と比較して皮膚刺激性が少ないなど安全性の高いと言われているエタノールがあります。エタノールは最近話題になったO-157をはじめ、一般細菌、緑膿菌、結核菌、水虫を引き起こす真菌といった幅広い効き目を示します。それでは、全ての細菌に効くかというと残念ながらそうはいきません。効かない菌も有るんです。それは芽胞菌といいまして、ボツリヌス食中毒を引き起こす菌には効かないとされてます。最近あるラジオを聞いてますと、このエタノールの効果を放送していました。多分にもれずエタノールも先程から言っているように濃度、時間、温度によって効果に影響を受けますので気を付けて使ってください。それと、エタノールはすぐ蒸発しますので、残留しての消毒効果は期待できませんのでこの点にも気を付けてください。

なるほど、それではこのエタノールですが、具体的にはどのような所に使用すればよろしいでしょうか

ええ、まずですねカビの発生や、今話題のレジオネラ菌のこともありますので、エアコンとか空気清浄器、換気扇などの噴出し口の汚れを落とすときに使うといいと思います。さらにこれを使う際に洗剤をよく落とした後でアルコールを染み込ませた布で拭き取るといいと思います。カビ類にも効きますので喘息などを持っている患者さんの家庭では月に一回、今ごろの季節ですとカビが繁殖しやすいんで頻繁にやるといいと思います。使用に際してはですね、可燃性ですので十分注意してください。そしてもう一つ注意しなければならない事があります、それは拭き取る方向は一方向に行うという事ですね。往復させると、折角消毒した面が汚染される可能性があるということです。これは消毒液を浸した布などで拭く時の全てに言える事で、基本となる行為ですので覚えておくと良いでしょう。
要するに、雑巾がけをするときに右左右左やってはいけないよという事ですね。
そうですね、ずうっと一方向に流すという事ですね。
わかりました。この他にはどんな事が言えますか
この他には、後で述べます塩素系消毒剤ではなかなか浸け置き消毒しにくい台所用品や、机、いすや作業台など幅広く使えると思います。ただ油を溶かす働きもありますので、油性の塗装など剥げてしまう事がありますので注意してください。
はい、判りました。(ここで曲挟む)さて、先生。先程から身近な消毒剤についてお話しを伺っておりますけれども、後半ではどのような消毒剤についてのお話しですか?
後半はまず、塩素系消毒剤についてお話ししたいと思います。塩素系消毒剤の代表例として次亜塩素酸ソーダがあります。これはですね、食器用の消毒剤として有名ですね。
あの、いわゆる茶しぶを落としたりとか…、
ええ、製品名でなんですが、キッチンハイター等が有名な例かと、あと赤ちゃんのいる家庭では哺乳びんの消毒にミルトンという製剤が良く使われてると思います。あと、皆さんですとプールの水とか水道水の消毒に使われています、カルキ臭いというのはこのせいですね。
なるほど、やはり菌を殺して安心な水を得るためにはこのカルキ臭いというのは一般的には嫌がられるけど、大変必要なものだという事ですね。
ええ、あの、後で触れますけど、水というのは腐るという事は細菌が繁殖しやすい状況にあると言えるということも頭に入れてください。この塩素系消毒剤の作用の特徴といたしましては、中性〜酸性で殺菌力が強くなります。酸性が強くなりすぎますと有毒な塩素ガスが発生しますね。酸性の薬剤とは必ず混合しない様にしてください。まぁ黄色いラベルで注意書きが書いてあると思います。何件かは生死に関わる事故も起きています。
そうですね、お風呂の御掃除をしていて主婦が倒れたっていう事件がありましたよね。
ええ、あのそういう際、必ず、密閉した部屋ではなくて、窓を開けて空気の入れ替えをしながら使うという事が大切だと思います。

この薬剤の特徴としましては、先程も述べました芽胞菌を除く各種微生物に殺菌効果があるという事がいえると思います。HBウィルス、エイズウィルスの他、各種のウィルスの不活性化ができるという事が言われています。これは蛋白を酸化して不活性化することによるものだという事です。次亜塩素酸ソーダにも欠点があります。布製、金属製製品に対しては強い腐食性があります。皮膚も荒れる事があります。こういったものはエタノールなどで代用したり、皮膚のケアには十分気を付けたほうがいいと思います。有機物によっても分解されやすく、殺菌力が容易に低下する事が云われています。

有機物と言いますと?
あの、食事の汚れと考えて充分だと思います。汚れを良く落としてから使うという事も大切ですね。
じゃあお皿などでは、よく洗剤で洗ってから殺菌をするという事ですね。
また洗剤もよく落としてください。あと自然の状態でも分解しやすいんで含量の低下が起こります。余りにも古いものはその使用を避けてください。
わかりました、先程ちょっとプールとか水道水の消毒に使われるというお話がありましたが、これについての留意点というのはございますでしょうか?
ええ、これは次亜塩素酸ソーダと水の関係についての話だと思いますけど、プールや水道水の消毒に使われる事は先程述べましたけど次亜塩素酸ソーダを水に入れて消毒いたしますが、この消毒効果というのは有効塩素濃度という指標で測っております。有効塩素濃度が低下いたしますと、消毒効果がなくなってくるという事ですね。で、余りにも古い水道水なんかはだんだん減っていきますので、やはり今の季節としては飲まないほうがいいという事が云えると思います。また蒸留水、カルキを飛ばした水、今はアルカリ性イオン水が流行ってますけど、そういった水は今の季節ですと一日ぐらい置くと腐ってくる、細菌が繁殖してくるという事が云えると思います。特にですね、井戸水、涌き水の汲み置きっていうのは熱処理しないで飲むのは止めるべきだと思います。

そうですか、大体何日ぐらいで井戸水とか涌き水は腐ってしまうのでしょうか?

ええと、井戸水、涌き水が腐ってるというのはなかなか言い難いのですが、その可能性があるという事でそういったものを使うという事を避けるという事が大切だと思います。O-157の問題がありますけど、これと直接関わってくる事はまだ証明されてませんが、可能性がまだ否定できないのでこれとこういった事に留意しながら水を使うという事がこれから食中毒を避ける重要なポイントになってくると思います。
はい、そうすると一日ぐらい汲んだものは使わないほうがいいという事がいえるんですね。
必ず、沸かして冷ましてから、飲むという事を頭に入れてくださいということですね。
それではですね、その他にどういったものがございますのでしょうか?
ええと次には、逆性石鹸について述べたいと思います。逆性石鹸の代表例としては塩化ベンザルコニウムというものがあります。オスバンとか逆性石鹸とかの通称でトイレや水周りの仕事の際、手洗い用として一般的に広く使われている消毒剤です。
はい、これは去年O-157が流行った時によくトイレの前にたらいが置いてあった水ですか?
そうですね、特徴としましては一般細菌、カビに対して殺菌力を示します。先程言った塩素系消毒剤よりは効き目の幅は無いのですが、芽胞菌、ウィルス、結核菌には効きません。皮膚粘膜に対して刺激が少ないという事はいい事だと思います。それから、臭いが無い、金属、布に対して腐食性が殆ど無いという事が言えると思います。それから価格も安いという事ですね。
ええ、では欠点というのは
これはですね、耐性菌がある事が知られています。緑膿菌などグラム陰性菌の中に抵抗性の有るものが報告されています。
耐性菌ですか
ええ、この耐性菌というと馴染みが無いんですが、緑膿菌、グラム陰性菌というのはですね、院内感染、特にコンプロマイズドホストの方に対しては非常に危険な菌といわれています。これは高齢者、それから免疫力の衰えた患者さん、小児、乳幼児も含まれます。こういった方をコンプロマイズドホストと称して、病院の先生や看護婦さんはこの人達を感染から守るような配慮をしております。これを院内感染対策と言うんですが、折角こういった患者さんに対して、病院のほうで配慮して感染から守ってるんですが、一般の患者さんの面会に際してですね、こういった留意しないで手洗いをしないで患者さんに会いに行くとか、うがいをしないとかといったエチケットを破る方はいらっしゃいますね。知らず知らずのうちにエチケットを破っているんですが、こういう事は頭に入れて、必ず病人に会いに行くときは最小限の回数、それから手洗いをする、今ですと病室の前に速乾性の手指消毒剤がありますからそれを使って手を擦り合わせて、それから病室に入るようにしてください。
この院内感染というのは手の皮膚からの感染というのが非常に多いことなんで、是非気を付けて頂きたいと思いますね。
そうですね。それから石鹸などによって沈殿しますので、殺菌力が低下するといわれております。よく石鹸などを洗い落としてからこの消毒剤を使ってください。それと、あとタオルとかシーツ、または汚物等の有機物に付着されやすいということもいえてますので、汚れもよく落とす、それから布に浸しておくときには高めの濃度で使うという事を心がけてください。
はい、その他の留意点と言うのはございますか?
はい、これはですね、消毒剤についてよく問題になる事なんですが。消毒液を充填する容器の管理ですね、これには注意してください。継ぎ足し継ぎ足しは耐性菌の温床になる事があります。充填する際、容器をよく洗浄してエタノールなどで消毒してから逆性石鹸を入れるといいと思います。
はい、わかりました。一口に消毒剤といいましても、いろんな留意点があったり、用い方があったりするという事が今日はよくわかりました。先生、今日はありがとうございました。
ありがとうございました。