出演者 小野雅康 1997.2.28

 “心と体のクリニック”今日のこの時間は、いわき市薬剤師会副会長、小野雅康先生にお話を伺います。

 聞き手はディレクターの、そがいずみです。「セルフメディケーションとかかりつけ薬局を上手に利用するために」というテーマでお話いただきたいと思います。先生宜しくお願い致します。

どうぞ宜しくお願い致します。
それでは、早速ですが、この「セルフメディケーション」という言葉から説明していただけますか?
自分で、治療するということですね。つまり、お医者さんにかかる以前の治療ということになります。カタカナを使っているのでもっともらしいですけれども、昔から誰でもやってきたことですね。
そうですか?そうしますと、セルフメディケーションが自然と行われていたのは昔であって、今はあまり行われていないということなのでしょうか?
いえ、そういう訳ではないのですが、大昔の人は風邪をひいたりお腹がいたんだときに草の根や木の皮を飲んでいたのだと思いますが、これは、今でも続いていますし、これがセルフメディケーションの始まりでありますよね。また、医療の原点だともされています。そがさんも、前のこのコーナーでですね、薬剤師会の佐久間先生とのお話の中で、胃の不調に梅干しを入れたお湯をお飲みになるとおしゃっていましたよね。
はい、言いました。

これもセルフメディケーションの一つで、これも昔から行われていたことに近いのではないかと思います。佐久間先生の、前回の民間薬のお話で、こういった昔からのセルフメディケーションについてはご理解いただけたのではないでしょうか。

 その後、明治から昭和の中頃までは、「自分の病気を大衆薬や民間薬で直すこと」とされておりまして、まだ予防の概念が殆ど含まれていなかった訳です。
そうしますと、現代のセルフメディケーションというのは、予防を含めてということになるのでしょうか?
そう言えると思いますね。現代のセルフメディケーションといいますと、「軽い病気を自己の判断や薬局薬店などの指導により一般大衆薬などで直すこと」及び「病気にかからないよう平素から食事・運動・睡眠・心の持ち方などに気を配り健康の増進を計ること」というように定義づけられるようになってきているわけです。
 そうしますと、お医者さんにかかる前までは自分で自己予防したり大衆薬を飲むなど、そういったことで普段から注意をしているということでしたら、誰でもされていることではないかと思うのですが、最近ではこれを医療のなかで、特に予防に関する部分が問題視されていると伺いましたけれども?
そうですね。これは保険も関係してくるのですが、昭和36年に国民皆保険になりましたね。特にその後、保険に関わる医療費が高騰を続けてきまして、このままでは保険制度そのものが破綻しかねない状態になってしまいまして、そのために過去に、大幅な薬価(保険で使う薬の値段)の切下げや医療費の個人負担を変える(以前は社会保険本人の方は無料だったのが、現在は1割負担していただきます)など、こういった色々な改正をしてまいりました。
また、この4月からは医療保険制度の改正もありますよね。これも非常に話題になっているようですが?
そうですね。医学薬学の進歩による高度な技術や新しい薬品の開発が進んだこと、急速な高齢化社会の到来によりまして、医療保険を支える財源の確保が難しくなってきているわけです。
それにしても、やはり個人の負担が多くなるということは、国民自らがお医者さんにかからないように大衆薬を飲む自己治療や、また、病気にならないようにするために自己予防することが重要になってくるとも言えそうですね。

 そうですね。不足しがちな財源を、上手に効率的に使うためにいろいろと改正しているので、国民自らが行う自己治療・自己予防は重要になってきているわけです。お金がないから、国民の皆さんに、医療保険を使わずに出来るだけ自分自身で病気の予防をして下さいといっているわけではありません。病気にならないことが大切であり、そのために医療関係者が進んで関わるべきだということになってきているわけです。

 高度成長、GNP優先の時代。この頃には「体をこわしても働け働け、体がこわれても保険でタダ」といった観念が行き渡りまして、自分で自分の健康を守ることがおろそかにされているきらいがあったわけなのですが、その結果、平均寿命が確かに驚異的に伸びましたけれども、様々な成人病の有病率が増えてしまっているわけなのです。病気にかかっても医療費はタダだと(実際タダということはありませんし、今度の改正を考えますと、ますます自己負担が増えてきそうだと予想されますけれども)たとえ、タダであったとしても、一度損なわれた健康がそっくりもとに戻ることはないわけですよね。こういうことで、予防というのは国民一人一人の問題でしょうけれども、医療経済の破綻とあいまって、病気を予防する、もし、病気になっても軽いうちに直すという考え方が大切になってきたわけです。

はい。良くわかりました。それでは、セルフメディケーションに対しまして、先生は薬剤師としてどのように関わっていきたいとお考えになりますか?
そうですね。予防の面でいいますと、予防知識を広めることが大切だと思いますよね。薬剤師というのは、まちの科学者として地域の皆さんに対し薬事衛生、食品衛生、環境衛生の知識を基にアドバイスする、例えば、成人病の多くは十数年から数十年かかってつくられるとされていますが、その原因は遺伝的なものを除いては平素の食生活や運動不足、肥満、ストレス、こういったものが主なものとされていますよね。そのライフスタイルの改善のためアドバイスをしたり、また、昨年はO−157による集団食中毒が社会問題となりましたが、消毒や調理に関する情報を発信するといったことではないかと思います。また、治療の面で考えますと、薬を正しく使うために住民のみなさんのお手伝いをすることではないかと思いますね。そのために、皆さんに薬を十分認識してもらうことが大切で、前にこの番組で薬剤師会の草野先生がお話していますけれども、「ゲット・ジ・アンサーズ」、すなわち、「お薬をお買いになるときは5つの大切な事柄を聞いて下さい」と訴えたいわけです。
この「ゲット・ジ・アンサーズ」という言葉がでたところで、ちょっと御説明したいと思うのですが、お薬の名前、効能、使用にあたっての注意、副作用、飲みあわせ、という5つの点でしたよね。
そうですね。この5つの事柄を、お薬をお買い上げになるときは是非心がけて頂きたいと、こう思っております。
はい。それではですね。曲をはさみまして、後半もまた先生にお話をお伺いしていきたいと思います。

心と体のクリニック”今日は、いわき市薬剤師会副会長、小野雅康先生に「セルフメディケーションとかかりつけ薬局を上手に利用するために」というテーマで、お話を伺っております。それでは、先生早速ですが、まちの薬局の薬剤師さんといいますと、どうしても薬を売る人という印象がある為に、医療という御立場より商売と考えてしまいがちなのですが?

そうなんですよね。薬局の薬剤師には、医療的側面と商業的側面といった矛盾する二面性があります。これは確かです。長い間薬局薬剤師は、薬を販売することで生計を立ててきましたので、よりたくさん売りたいといった商業的側面に走りすぎたきらいがあったかもしれませんね。今は、たくさんの薬のコマーシャルが流れていますけれども、そういった情報がたくさんある為に、薬の名前を指名して購入する人が少なくないわけです。また、皆さんわりとお忙しそうにおいでになるのものですから、薬に関する指導やライフスタイルの改善についてアドバイスすることがなかなか出来なかったという面が確かにあります。こういったことを大いに反省しなければならないと思いますし、医療を取り巻く社会の変化、医療の大革命と言われる大きなうねりが押し寄せてきていますので、薬剤師はそういった中でも単なる物売りで終わるわけにはいかなくなってきているわけです。
そうですね。前回も少しお話したのですが、あまりにも薬の種類が多すぎて、いったいこれは何の薬なのか、こういった場合は何に効くのかということを聞きたいという消費者の要望もあったのではないかと思いますので、そういった社会の変化が、薬剤師さんそのものの役割を変えてきたのではないかと思うのですが?

そうですね。それから保険制度の方もあるのですが、高齢化社会の到来によりまして疾病構造、急性疾患が多かったのが慢性疾患へと変わってきています。また、科学技術の進歩によりまして医学薬学が進歩したわけですね。高度な技術作用の強い医薬品の開発が盛んになり、医薬品の情報量が非常に増大しました。こういった医療の高度化というのは、これまでお医者さん中心の医療だったのですが、お医者さん一人でというのもなかなか大変ですし、そういった中でいろいろな人たちがチームを組んで、お医者さんの手助けをするというような考え方が出てきまして、チーム医療へと進んできたわけです。それから、医療法の改正があり、薬剤師に対しても、医療の担い手として参加するよう求めてきたわけです。薬剤師は、医療的側面と商業的側面があるわけですが、この両方を上手くかみ合わせて地域医療のなかにプラスに作用させなければならないようになってきたわけです。

 今、家庭のなかにはいろいろな薬があると思います。配置売薬(薬箱に薬を保管し使用した分のみ後で支払う)、まちの薬局薬店で購入した大衆薬、処方箋によってもらってきたお薬、また、お医者さんから直接渡された薬と、たくさんの薬が混在していまして、患者さんは、どれをどのように飲むのかと、その判断に悩みながら使用しているのが現状ではないかと思われるわけですよね。大衆薬だけを取り上げますと、最近の大衆約は以前に比べますと、はるかに効果の高いものが含まれてきています。特に、現在も医療の現場で使われている薬、そういった医療用の薬を大衆薬に転用する、“スウィッチO.T.C”(スウィッチ=転用・O.T.C=カウンター越しの薬=大衆薬)といわれるような強い薬を使用するときには特に十分注意しなければ、かえって害になることもありますからね。ところでそがさん、大衆薬を使用したことがありますか?

ええ、もちろん。軽い風邪や、頭痛の時、それから、目薬はいつも使っておりますけれども。
そうですか。その中に紙が入っていまして、必ず使用上の注意というものが書いてあるのですが、お読みになりますか?
 使用上の注意というか、何錠、いつ飲めばいいのか、そういった薬のビンの裏に書いてあるような程度のことしか気をつけて読まないですね。
そうですか。大衆薬の中には必ず一枚の紙が入っています。それにいろいろな注意書きがありまして、必ずですね、その中に“使用上の注意”という項目があります。その中には、1・2・3の大体3つに分けてありますけれども、患者さんの体質や状態、妊娠の有無や治療中の病気がないか、副作用、他の薬との併用がないか、さらに効果がなかった場合について、使用前、使用中、使用後にわけて何か問題があれば、それぞれ医師、または薬剤師に相談してくださいと、相談を義務づけているわけです。大衆薬については、お医者さんには聞きづらいでしょうから、どうしても薬局で聞くようになると思われるのですが。
それにしてもですね、大衆薬を服用する際に、他の薬を一緒に飲んでいるとか、そういった飲みあわせや、それによる副作用も心配ですけれども。
当然そうなると思いますね。こういった薬に関することを、もしすべて記録し、ファイルして、必要なときにはそれを基にアドバイスできるような所、あるいはそういった人がいたとしたら、大変便利になりますよね。このファイルされた記録が薬暦管理簿であり、それをもとに相談にのってくれる薬局が「かかりつけ薬局」というわけです。
この番組の中でも、今の「かかりつけ薬局」という言葉が何度か出てまいりましたけれども、セルフメディケーションのために、この「かかりつけ薬局」を持つということが重要なのですね。そして、処方箋による薬だけではなくて、大衆薬も含めて管理してもらうということが言えそうですね。
その通りです。

はい。それでは、身近な薬局を「かかりつけ薬局」として利用することは可能ですか?

「かかりつけ薬局」は皆さんが判断して選ぶものです。薬局の側が勝手に「かかりつけ薬局」だといばってみてもしようがありませんし、地域の皆さんから本当に信用の出来る薬局として選ばれることで、はじめて「かかりつけ薬局」となれるわけです。

 それでは、この地方の薬局がどうかといいますと、幸いなことにですね、いわき市では行政や松村総合病院さんに大変お世話になりながら、面分業に関するインフラを確立しようと、平成5年から努力したり研修を積み重ねてきました。その中で「かかりつけ薬局」になる為のいろいろな勉強があったわけですよね。これが実際に、平成6年6月から松村病院さんの方で院外処方箋を発行して下さったので、それを応需しながら、処方箋と大衆薬、あるいは患者さんの様々な状態、患者さんの悩み、そういったことをお聞きしながら、勉強を重ねてきました。大衆薬の販売を主としてきた薬局も、いろいろな医療機関が発行した処方箋を応需するだけの知識と技術と経験を身につけてきています。すでに多くの薬局が地域の方々の「かかりつけ薬局」として活躍しておりますし、皆さんにも喜ばれてきているわけです。

 皆さん、かかりつけのお医者さんをお持ちだと思いますが、そういったお医者さんと同じように「かかりつけ薬局」を選んで、健康を守る相談役として、よりいっそう薬剤師をご利用いただければと願っております。

はい。先生ありがとうございました。

  今日は小田雅康先生に「セルフメディケーションとかかりつけ薬局を上手に利用するために」というテーマでお話を頂きました。先生ありがとうございます。