出演者 佐久間美典 1997.1.24

 健康は私達の願い、そしてかけがえのない宝物です。この時間では、皆さんと共に健やかな心と体を大きく育んで参りたいと願っています。“いわき医療最前線”健康で心地良い毎日のために、是非お役立て下さい。

“心と体のクリニック”今日は薬剤師、佐久間美典先生にお話を伺います。聞き手はディレクターの、そがいずみです。漢方薬といいますと、苦くて飲みづらいけど、でも体に効く薬といった感がありますけれども、具体的にその内容について詳しくわかるという事はないので、今日は是非、この漢方薬と民間薬、この違いについてお話いただきたいと思います。まず、漢方薬について教えていただけますか?

はい。漢方薬は、数種類から数十種類の生薬を目的に応じて、規定通りの処方どおりに組み合わせたものを処方薬といい、配合された生薬は互いに作用を増強したり穏やかにしたりするわけです。風邪などに用いられる葛根湯は、7種類の生薬で作られています。また、漢方薬は数千年以上にわたり多くの漢医による医学的経験と実践証明という学問的な背景があるわけです。「証」という独特の漢方的診断に基づいて使用するので、漢方療法に通じた専門家に相談して、症状にあった使用をすることが必要です。誤って使用しますと、副作用がでることがありますので、注意が必要です。この点、ほとんど何の配慮も必要としない民間薬の使用とは異なる訳です。
今ですね、民間薬というお話がでましたけれども、この民間薬について、また教えていただきたいのですが?
民間薬とは古くから伝えられた民間療法に使われる薬のことです。胃が悪いときにセンブリを、下痢をするときにはゲンノショウコを煎じて飲めば早く治るとか、モモの葉やヨモギの葉を浴用(お風呂に入れる)にすれば皮膚病に良いというのが民間療法です。民間療法の特徴の一つは経験の積み重ねによって、その地域で永く人々の生活に溶け込み、昔からなんとなく効いたとか良く効いたということが代々伝えられていることです。もう一つは、多くは単味(一種類)で用いられ身近にあるものが使われます。
なるほど、そうだったんですね。私もですね、例えば、よく胃がムカムカして気持ち悪いときに、梅干しをお湯で溶かして飲むとすっきりするとか、これもやはり民間療法の一つなんでしょうか?

そうですね。梅干しをそのまま飲む場合もありますけれども、梅干しを一度火で炙ってからお湯で一緒に飲んでもらうと、体が温まるということがありますよね。

なるほど。では、後半でそういった民間療法についてお話を伺っていきたいと思います。さて、また漢方の話に戻りますけれども、私の知識の中では漢方というのは中国から発せられたというように思っていたのですが、この漢方の歩みについて教えていただけますか?

はい、漢方とは、奈良時代以来、日本で行われてきた中国医学に基づいてつけられた日本製の呼び名なのですが、中医学とはどういうものかというと、経験・民間療法を出発点として、中国医学が、数えきれないほどの体験と試行錯誤を繰り返し、実績などを積み重ねてきて、実用的な医療体系として完成したのは、およそ5000年くらい前のことですね。中医学の源流というのは、黄河、江南、揚子江の三つの文化圏にあるわけですけれども、黄河文化圏は、北方の方に入りまして、こちらの方は寒いという観点から鍼灸療法が生まれてきて、気候が温暖で肥沃な江南文化圏や、揚子江文化圏は、薬草の研究が非常に盛んに行われて、漢方医学の原点及び薬物学の基礎が作られたということです。

よく中国4000年の歴史といいますけれども、中国5000年の歴史の中にこの漢方薬という考え方が、現代にも、伝えられていると理解したのですが、それでは、この中国で生まれた漢方、日本にはいつ頃入ってきたのですか?
はい、我が国には、朝鮮半島から医薬が導入されてきたのは、朝鮮の三国時代、西暦414年と伝えられています。雄略天皇3年・459年には高麗より薬師(薬屋)が来朝し、やがて遣随使(飛鳥朝)や遣唐使(奈良朝)などにより、中国文化の直接導入が始ったというわけです。医書や本草書が続々と日本に入ってきて、平安時代の中頃には、丹波康頼の「医心方」などが著されてきたわけです。専門医による中国医療から、僧侶による医療、また、外科医学や産科医学などの医業分化の全盛(室町時代)、他には「傷寒尚論」を原動力とする傷寒・金匱医学の復活(江戸時代)を経て、日本の漢方が発達して、それぞれのいろいろな長所を取り入れたコウホウ派・折衷派・個性派などが発達してきたわけです。
その後、日本は鎖国という時代を迎えまして、ペリーが来航することによりましてオランダの文化が入ってきました。それから医学におきましても西洋医学が入ってまいりまして、 その時、漢方というのは、日本でどのように変わっていったのでしょうか?
はい。明治以降に現代医学が発達し、漢方が下降気味になりましたが、熱心な漢方医や、薬剤師により現在に至りました。ご存知のように風邪や婦人病をはじめ、いろいろな場合で漢方が使われるようになりました。
はい。それでは、後半もまた、先生にお話を伺っていきたいと思います。

“心と体のクリニック”今日は薬剤師、佐久間よしのり先生に漢方薬と民間薬について伺っております。それではですね、前半では漢方の歴史などのお話を伺って参りましたが、実際に漢方薬と民間薬を使ってみましょうという時の違いを、具体的な例をあげて教えて頂きたいと思います。それでは、漢方から教えていただけますか?

はい。漢方では症状や状態によって証が変わってくるわけですけれども、これが非常に複雑に絡み合っていくのですが、例えば、風邪の例をあげますと、頭痛・発熱・悪寒というのが風寒の症状になるわけですけれども、これで、この症状の他に、体の節々が痛かったり、重だるく熱が高いという場合は麻黄湯が使われていくわけです。逆に、節々が痛く、寒気が強い方の場合には麻黄ひさいしん湯という薬が使われています。また、首筋や肩凝りがある場合は葛根湯、鼻水が出る場合は小青龍湯、汗がじわじわでて気持ちが悪くなっている人は桂枝湯、汗の量が多い人は桂枝加黄ぎ湯、また、寒気が少なく熱が高い、のどが非常に痛く尿の色が濃い場合は風熱の症状といわれるわけですけれども、その場合は銀ぎょう散(体を冷やしていく薬)などが使われます。また、下痢の症状がある場合には参苓白朮散が使われ、胃腸が弱く神経質気味の人は香蘇散、もともと体力がなく咳や痰が多く非常に胸苦しい症状がある場合には参蘇飲というお薬が使われます。咳の場合は、体力があって痰がでる場合には麻杏甘石湯、痰がでなくて非常に強い咳がでる場合などには麦門冬湯、のどにつかえる感じがあって、から咳が頻繁にでる場合には半夏厚朴湯が使われます。

舌を噛みそうな漢方の名前がたくさんでてまいりましたけれども、今、風邪をひいている人が非常に多くて、風邪一つとってもその症状によって、服用する漢方が違うということが、良くわかりました。

それでは、続いて民間薬について教えていただけますか?

はい。民間薬はいろいろあるわけですけれども、葛根湯の中に入っている葛根、これはクズと民間薬では呼ばれていますが、これの根っ子ですね。これをクズ粉にしてクズ湯にして飲まれると発汗作用があるのでいいということです。アカツメグサは、皆さんご存知のようにシロツメグサというのがありますが、それに赤みがかかった似た様な草ですね。これは、開花前のつぼみを乾燥させて煎じて飲んでいただくと、風邪とか咳・痰、痛みとかおできにも使われていきます。また、海の砂浜によく咲いているハマボウフウなどは乾燥した根を煎じて飲みますと、これも発汗作用があります。他に、一般的に食事で使われるラッキョウなどは、生のまま味噌をつけて食べていただいたり、味噌汁に入れて食べていただくと、汗をかかせてくれますから非常に良いわけです。タマネギなども細かく刻んでヒネショウガと醤油か味噌と調味して熱湯を注いで飲んでいただくとよろしいです。

そうしますと、ネギとか、そういった辛いものというのが、発汗作用があって、それによって風邪の症状を和らげるということなんでしょうか?
そうですね。ネギなどは非常に細かく小口切りにして、生ネギを味噌汁などにいれて食べていただくと、汗をかいて、体をお湯によって温めてくれますから、風邪が非常に治りやすいということですね。果物などではキンカンなど、果実の砂糖漬け、または焼酎漬けにしたものをお湯で割って飲んでいただくと体が温まるというわけですね。また、温州みかん、これは皮のほうを乾燥させて煎じて飲むと非常にいいわけですけれども、これとおろしショウガを少量加えていただくと、ショウガも発汗作用と温めてくれますので、治りが早くなるわけです。ユズは薄切りにして食べていただくと、やはり、汗をかかせたり、熱を下げてくれる作用があるわけですね。お茶は渋茶でうがいをするというのが予防ですね。
これは、予防といいますと、風邪の予防にお茶の成分の何が効くのでしょう?
タンニンとかですね、そういった成分のものが風邪を予防してくれる形になりますね。
はい。あと、これらの民間薬を混ぜ合わせておかゆにして食べる方法もあると、先程お伺いしましたけれども、今、日本は核家族化が進みまして、なかなかおばあちゃんの知恵袋ではないですけれども、そういった昔の人の民間療法を聞く機会が少なくなってきてると思いますので、なかなか相談する人がいないのではないかと思うんですね。そういった場合、どうしたらよろしいでしょうか?
そうですね。最近はそういったおばあちゃんの知恵袋というか、お年寄りがいない家が多いわけですから、かなり相談できないと思いますけれども、お医者さんとかですね、あとは身近な薬局・薬店さんにいってですね、いろいろなつまらないことでもいいですから、そういった事を相談していただければ、知識を得るわけですよね。ちょっとした知識があることによって、自分で直せることがあるわけですけれども、また、そういった知識があることによって慌てず対処できるわけですね。例えば、そういった形で相談していただいて、本格的に漢方薬を服用する場合などは、漢方専門医院とか、漢方専門薬局に行かれて相談されていただくといいわけです。

はい。今日は先生に漢方薬と民間薬についてお話を伺いました。

先生ありがとうございました。今日の“心と体のクリニック”お話は薬剤師、佐久間美典先生に伺いました。